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古事記「黄泉国」を探る

亡き妻イザナミの後を追って、黄泉国へ向かうイザナキ。イザナミとの約束をイザナキが破ったことにより、二人は永遠の別れを告げることになる。

注目したいのは、黄泉国の位置である。『古事記』では、高天原(天上界)と地上界の関係が上下であるのに対して、地上界と黄泉国の関係は平面的に書かれている。また、出雲地名が多くあり、死国が出雲にあるという思想があったようだ。

古事記 「黄泉国」あらすじ

亡き妻イザナミに会うため、イザナキは黄泉国へ行く。イザナキとイザナミは御殿の戸をはさんで向かい合った。

「愛しい妻よ、あなたと私が作ってきた国はまだ作り終わっていない。さあ、帰ろう」
イザナキの言葉にイザナミが答えて言った。
「残念です、もっと早く来てくれたなら。私は黄泉国の食べ物を口にしてしまいました。でも、愛しいあなたが来て下さったのです。帰りたいと思うのですが、しばらく黄泉神と相談いたします。その間、私を見ないでください」

イザナミが御殿の中に入ってから、ずいぶん長い間イザナキは待った。待ちかねてたイザナキが、火をともして御殿の中に入ってみると、そこにはうじにたかられて、体中に八の雷神を発生させたイザナミの姿があった。

恐ろしさにイザナキが逃げ帰ろうとすると、イザナミが言った。
「私に恥をかかせましたね」
よもつしこめがイザナキを追い、次に八の雷神が千五百の黄泉軍を率いて追ってきたが、イザナキは物を投げながら逃げ切った。

最後にイザナミ自身が追ってきた。黄泉比良坂で大きな石をはさんで二人は向き合う。イザナミが言った。
「愛しい夫よ、あなたがこんなことをするならば、私はあなたの国の人間を一日千人殺しましょう」
それに対してイザナキが言った。
「愛しい妻よ、あなたがそうするならば、私は一日に千五百の産屋を立てよう」
だから、一日に必ず千人が死に、一日に必ず千五百人が生まれるのである。

イザナミを黄泉津大神という。また、イザナキを追ってきたことから道敷大神ともいう。
黄泉の坂を塞いだ石は道反之大神となずけ、また黄泉戸を塞いだ大神ともいう。その黄泉比良坂は今の出雲国の伊賦夜坂である。

古事記 「黄泉国」語句解説

黄泉国(よみのくに):
死者のいく他界

八の雷神(やくさのいかづちがみ):
イザナミの頭、胸、腹、陰、左手、右手、左足、右足に八種類の雷神が発生した。(それぞれ大雷、火雷、黒雷、柞雷、若雷、土雷、鳴雷、伏雷)

よもつしこめ:
黄泉国の醜女(しこめ)。死の穢れを表現した。

黄泉比良坂(よもつひらさか):
現世と黄泉国を結ぶと考えられた坂。

伊賦夜坂(いふやさか):
島根県東出雲町の揖屋神社のことか?

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(1999/3/12)