それぞれが父イザナキに任された国を治めていたが、スサノヲだけは自分の国を治めようとしなかった。大人になって髭が長くのびても泣きわめいていた。
その泣く様は青々と繁った山が枯山となり、河海は泣き乾いてしまうほどてあった。そのため悪い神の騒ぐ声が充満し、多くの禍が起きた。
その様子をみてイザナキがスサノヲに尋ねた。
「何故、おまえは任せた国を治めず、泣きわめくのか」
スサノヲが答えた。
「私は亡き母に会いたくて、母が住む根の堅州国にいきたくて、泣いているです」
これを聞いたイザナキは大変怒って、
「ならば、おまえはこの国に住んではならない」
といい、スサノヲを追放した。
そのイザナキは淡海の多賀に鎮座している。
それからスサノヲは
「ならば、アマテラスに申し上げてから根の堅州国に行こう」
と天へ上っていった。スサノヲが天へ上る様子は山川が動き、国土が震えるほどであった。
その音を聞いたアマテラスは驚いて、
「私の弟が天へ上ってくるのは、善き心からではあるまい。我が国を奪うつもりに違いない」
というと、髪を解いて角髪に束ねた。髪や手にたくさんの勾玉を貫き通した長い玉の緒を巻きつけ、体には弓矢を射るための武具を身につけた。
アマテラスは雄々しく勇ましい姿で待ち受けて、スサノヲに尋ねた。
「何故、上ってきたのか」
これにスサノヲが答えた。
「私に邪心はありません」
そして、父イザナキとのやりとりを話して、いった。
「根の堅州国へいく事情を申しあげようと、参ったのです。謀反の心はありません」
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