スセリビメもスサノヲも既にオホナムヂが死んだものと思った。
スセリビメは、葬式道具を持って泣きながら現れ、父スサノヲは野に出て立った。その時、オホナムヂが現われ矢を差し出した。
そこでスサノヲはオホナムヂを家に入れ広い部屋に呼び、スサノヲの頭のシラミを取るよう命じた。オホナムヂが頭を見ると、シラミではなくムカデがたくさんいた。するとスセリビメが椋の木の実と赤土をオホナムヂに渡した。木の実を食いちぎり赤土を含んでツバを出すと、スサノヲはムカデを食いちぎってツバを吐き出しているのだと思った。スサノヲは心の中でオホナムヂをかわいい奴だと思いながら、眠りについた。
するとオホナムヂはスサノヲの髪をつかみ、部屋の柱ごとに結び、大きな石で部屋の戸口を塞いだ。妻のスセリビメを背負い、スサノヲの宝である生太刀、生弓矢、天の詔琴を持ち、逃げ出そうとしたその時、天の詔琴が木に触れて、大地が鳴り動くような音が起った。寝ていたスサノヲは驚いて目を覚まし、髪が柱に縛られていたので部屋を引き倒してしまった。スサノヲが結ばれた髪を解く間に、オホナムヂとスセリビメは遠くへ逃げた。
スサノヲは黄泉比良坂まで追ってきて、オホナムヂを遠くに望みながら叫んだ。
「お前が持つ生太刀と生弓矢で、お前の異母兄弟を追い払え。お前は大国主となり、また宇都志国玉神(ウツシクニタマ)となって、私の娘スセリビメを正妻にしろ。宇迦山のふもとに太い宮柱をたて、天高くそびえた宮殿に住め。こやつめ」
スサノヲの言葉通り、オホナムヂは生太刀と生弓矢で兄弟たちを追い払い、国造りを始めた。
さて、ヤガミヒメは先の約束通りオホナムヂと結婚した。ヤガミヒメは出雲へつれてこられたが、正妻スセリビメを恐れて、生まれた子を木の俣に挟んで因幡へ帰ってしまった。
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