大国主神が出雲の美保岬にいたとき、波の向こうから天の羅摩船にのって、蛾の皮を衣服にまとって、近づいてくる神がいた。そこで名前を尋ねたが答えなかった。大国主神の供の者に尋ねたが皆「知りません」といった。するとガマが「これはクエビコがきっと知っているでしょう」というので、クエビコをよんで尋ねると「これはカムムスヒの子、少名毘古那神(スクナビコナ)です」と答えた。
そこでカムムスヒに申し上げるとカムムスヒ次のように答えた。
「これは実の我が子です。子のなかでも、私の手の指の間から出た子。お前は葦原色許男命と兄弟となり、この国を作り固めよ」
そこで大穴牟遅と少名毘古那は協力して、国を作り固めた。その後、少名毘古那は常世国へといってしまった。
大国主神は憂いて、
「私ひとりで、どうして国を作り固めることができよう。どの神とこの国を作っていけばよいのか」
と嘆いた。そのとき、海を照らして近づいてくる神がいた。
「私を奉りなさい。そうすれば私はあなたと共に国作りに協力しよう。そうしなければ国作りは難しいであろう」
「ならば、どのように奉ればよいのですか」
「私を倭の青々とした山々の中の、東の山の上に奉りなさい」
これが御諸山の上におられる神である。
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