古事記「国譲り(後編)」を探る
古事記「国譲り(後編)」あらすじ
建御雷之男神が再び戻ってきて、大国主神に尋ねた。 「あなたの子、事代主神と建御名方神の二神は、天つ神の御子の仰せに従い背きませんと言った。さあ、あなたの気持ちはどうだ。」 大国主神は答えた。 「私の子、二神が申すとおり、私も背きません。この葦原中国は仰せのとおり献上いたしましょう。ただ私の住む所は、天つ神の御子が皇位をお継ぎになる立派な宮殿のように、地底の岩盤に太い宮柱をたて、高天原に届くほど氷木を高くしてください。そうすれば私は、遠い遠い幽界に隠れておりましょう。また、私の子供たちは事代主神を頭にして従わせれば、背く者はいないでしょう。」 こうして出雲国の多芸志の小浜に立派な宮殿がつくられた。水戸の神の神の孫である櫛八玉神(クシヤマタノカミ)が膳夫となって神聖なご馳走を奉った。櫛八玉神は鵜の姿になり、海の底へ入ると、海底の粘土をくわえて出て、たくさんの神聖な平たい土器をつくった。それから、海藻の茎で燧臼と燧杵を作り、火をおこすと、祝の言葉を述べた。
こうして、建御雷之男神は高天原へ帰り、葦原中国を平定した様子を伝えた。
古事記 「国譲り(後編)」語句解説
氷木(ヒギ): 屋根の両端の木が交差して、棟より上に突き出た部分。
多芸志の小浜(タギシノオバマ): 所在未詳。
水戸の神(ミナトノカミ): 水の出入りする水門の神。河口の神。
膳夫(カシハデ): 食膳をつかさどる者。調理する者。
燧臼・燧杵(ヒキリウス・ヒキリキネ): 板にくぼみをつくり、先のとがった棒をあて、強くもんで火をおこす発火道具。
栲縄(タクナハ): 楮の皮の繊維でつくられた縄。
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(2001/9/8)