この夏、四ヶ所の社殿からなる諏訪大社のうち、もっとも古い歴史をもつ上社前宮を訪ねた。本宮の日の出の方向に前宮があり、本宮が前宮を拝むような位置関係である。他の三つの社殿(上社本宮、下社春宮、下社秋宮)と比べると、はるかに規模が小さく、山間にひっそりと隠れるようにたたずんでいる。前宮は昭和七年に改築されたものであるが、周辺は観光地化されておらず、脇を流れる清流の音が心地よく響いていた。自家用車で行ったのだが、カーナビがなければ、たどり着けなかったかもしれない。
前宮は、古来より原始的な神、ミシャグジ神を信仰している。前宮の神奈備山は守屋山。古代諏訪信仰のなごりをとどめている。
地元では、モレヤの神(ミジャグジ神)が建御名方神(タケミナカタノカミ)が力くらべをして負けてたという話が残っている。つまり、出雲では力くらべに負けた建御名方神が、諏訪の先住者ミジャグジ神に勝ち、諏訪の支配者になったわけである。敗者であるミジャグジ神への信仰が根強く残っているのが面白い。
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